好きな映画・舞台などの感想を綴っております。
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2006.7.15
母の一周忌。
兄に呼ばれるままに、帰郷する。
居心地が悪いのは行く前から承知していた。
実際帰ってみると、自分の居場所なんてなく、まとまりつくような因習に満ちた世界。
そんな中で心の支えは兄だけだった。
優しくてまっすぐで、不器用なところもある兄。
だけど彼は誰よりも尊敬されていて、信頼も厚かった。
母の法要も終え、帰ろうとする猛を兄は留めた。
幼馴染も誘って昔行った渓谷へいこうと言うのだ。
断る力も持たないままに、猛は出かけることにする。
その女性は昔猛と付き合った女性であり、彼女は明らかに自分に行為を持っていた。
兄と仲良くする彼女をみているうちに、不思議な感情に囚われる。
その感情のままに、不確かな関係を結ぶ二人。
兄が彼女に厚意を抱いていると知った上でのことだった。
猛に揺さぶられ、ゆらぐ彼女。
もう三人の世界は元には戻れないところにきていた。
そんな時に事件は起こる。
幼馴染の千恵子が渓谷にかかった吊橋から転落したのだ。
その吊橋には残された兄の姿。
唯一の目撃者となった猛は……。


愛するが故に憎み、愛するが故に分かり合いたい。
ゆれる感情、そして記憶。
記憶は得てして確固たるもののように感じるけれど、それは感情と同じぐらい曖昧で主観的なものだと知る。
それに対比するように現れる写真や8ミリの映像。
データとして残っているそれはどこまでも客観的に事実を映し出す。
ゆれる感情に呼応するようにぶれる記憶。
どれが事実でどれが現実なのか。
そして兄弟という存在。
どこまでも近くて、個である限りどこまでも分かり合えない関係。
近いからこそ愛しくて、分かり合えないからこそ時として殺したいほど憎いと思う。
一番愛しくて頼もしい存在でありながら、実は一番のライバル。
そんな二人を分ける川は猛と稔だけじゃなくて、猛の父の間にもある。
家族だからこそ切れないしがらみにも似た愛情と、それでいて不確かな絆。
誇らしいと思う感情の裏でうらやましいと感じる。
劇中の稔が私の中の感情に似ていてびっくりしました。
兄弟の難しい危うさや拭えない不思議な関係が感情や記憶をゆらがせる。
全てが曖昧になり、絡み合いながら揺らいでいく。
そんな心のゆれを水面や情景が印象的に示唆し、そして役者さんたちが迫真の演技で演じられています。
言葉もさることながら、言葉なく見つめる時の目線に惹きつけられました。
特に主役のオダギリさん、香川さんの視線は雄弁に物語り、そして俊二に揺れ動く感情を表しています。
ガラスごしに見える表情や映った影も本当に印象的で、二人の間の境界線を顕わにしていきます。
重なる蔵と重ならない表情。
本当に印象的でした。
映画としては本当に面白かったです。
色々と見に行ったりしていましたが、ここまですんなりと入り込んでしかも行き先を見守りながら、時として息を呑んだり、時として笑ったりしたのは初めてです。
決して奇麗事ばかりじゃないんですが、本当にそのいやらしさすらも受け入れられる。
暗くもなれるのに、決して絶望的にならない。
これは私自身に信じたい心があるからかもしれませんが。
でも役者さん・スタッフさん、そしてそれを取りまとめた監督の力がうまく重なり合ったからああいう無理のない、すごい作品ができたのだろうと思いました。
この作品はこれからも好きな映画の一つとして残っていくんだろうなぁ。

西川監督によるティーチ・インも行ってきました。
またそれも後日。
雑誌などで見るように本当に小さくてかわいらしい方でしたよ~。
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